“ちょうどええ”おかやま農業体験・農園アクティビティー・レポート

スタンダードコースを体験

岡山でも最高品質のぶどうを栽培されているフルーツ農園で、農業体験してきました。

こちらの農園がある岡山市吉尾地区は、昭和初期より続いている岡山県下有数のぶどうの名産地です。世界的にも珍しいガラス温室が残っているのも、この地区の特長です。

フルーツ農園を訪れたのは 2021 年6月下旬。
ちょうど、ぶどうが樹に実りはじめ、畑一面がエメラルドグリーンの宝石を散りばめたように、美しい風景が広がっていました。

農業体験1:ぶどうの話-岡山のぶどうはなぜおいしいのか-

フルーツ農園に到着したのは13時をまわった頃でした。

山の天気は変わりやすいと言いますが、それまで晴れていた空がフルーツ農園到着と同時に雨模様へ…自然の洗礼を受けるところから、農業体験はスタートしました。

フルーツ農園のオーナーの機転で、雨が上がるまで園内併設のカフェで岡山市吉尾地区のぶどうの話を聴かせていただくことになりました。

なぜ岡山のぶどうがおいしいのか?

理由はいくつかありますが、1つ目は「環境が適している」ことです。

ここ岡山市吉尾地区は降水量が少なく、日照時間が豊富なため、ぶどうが病気にかかりにくく、味と香りも良く育つそうです。また、山裾のなだらかな地形が水はけを良くし、成長過程で品質が落ちてしまうなど悪影響を受けることも少ないとのことでした。そして、土壌も肥え過ぎておらず、ぶどう栽培には最適な環境にあるということが岡山のぶどうがおいしくなる大きな理由であることを教えて頂きました。

2つ目の理由は、このような環境に加えて、更にその土地独自の栽培技術が生まれていったことです。真面目で負けず嫌いな県民性が影響して、どこよりもおいしいぶどうを作りたいと試行錯誤を繰り返した結果が現在の栽培技術にも繋がっているそうです。

岡山のぶどうがブランド化されるようになったのは、これらの理由が偶然にも重なったためだと教えていただきました。

たまたま、その場に居合わせた別グループのお客さんもお誘いして、談笑や質疑応答を交えながらオーナーのトークを聴いている時間は本当にあっという間でした。

話にも花が咲き、気づけば30分が経過していました。雨はすっかり上がっており、雲の隙間から太陽の光が少し差し込んできたところで、オーナーの案内でフルーツ農園を見学させていただくことになりました。

農業体験2:フルーツ農園見学ツアー

オーナーがまず案内して下さったのは、テニスコート4面ほどがすっぽり収まるくらいの広さのビニールハウス。

その広さだけでも驚きですが、中に入ると、そこに実る一面のシャインマスカットに、ヨーロッパの広大なぶどう畑を見た時のような驚きと感動を覚えました。

オーナーは頭上を指しながら「マスカットに当たってしまったら実が傷むから、気をつけて鑑賞して下さいね」という注意喚起をされ、そのあとは自由にハウス内を見学させていただきました。

ここで栽培技術の一つである、剪定(せんてい)についてご説明いただきました。剪定とは、翌年以降も高品質なぶどうを収穫できるよう、不要な枝を切り詰める作業のことです。剪定には短梢剪定(たんしょうせんてい)と長梢剪定(ちょうしょうせんてい)があり、岡山市吉尾地区は短梢剪定を取り入れているようです。昨年伸びた枝を根本近くから切り落とすことで、そこから伸びようとする若い枝が成長し、翌年に良いぶどうを実らせるというサイクルをまわしています。常に1年後、2年後の先を見越して育てていることが1つ1つの作業から感じ取ることができました。

こちらのフルーツ農園では、販売用の形の整ったぶどうだけではなく、不揃いなぶどうも全て切り落とさず大切に育てておられます。見栄えが悪くても、美味しいジュースやフルーツカレー等に加工される為、彼らは彼らで大切な役割があるのだとか。「綺麗に実らなくても、悪いのはぶどうじゃなくて作り手の責任と思ってる」とお話されるオーナーから、ぶどうを我が子のように大切に大切に育てている様子が伺えました。

なぜ岡山のぶどうがおいしいのか?という問いの答えは、ここにもあるのかもしれないですね。

農業体験3:ぶどう摘房(てきぼう)体験(ぶどうの樹オーナーの方のみ)

フルーツ農園の見学の後はいよいよ農業体験へと移ります。

6月下旬現在。ぶどうの樹には、満開の藤棚を想わせるほどにたくさんの房が実っており、これが全部熟れたら夢のようだ!と淡い希望を抱きましたが、そうはいかないようです。果汁を濃く、甘くする為には1本の小枝で育てられる房の数に限りがあり、それ以上は切り落としていくそうです。短い小枝だと、上限は更に減る為、どの小枝にどの房を残すかという判断がとても重要になってくるそうです。

今回は、オーナーご夫妻の指導の元、摘房を体験させていただくことができました。(※)

※摘房は「ぶどうの樹オーナー」の方のみ体験が可能です。「ぶどう樹オーナー制度」については別途紹介させていただきます。

体験させていただいた樹は、ベリーアリカントAという品種のぶどうです。熟すと皮も実も濃い赤色に染まる為、赤ワインの色付けとして用いられることがありますが、国内では滅多にお目にかかれない珍しい品種です。

ベリーアリカントA樹は背が低く、地面から1メートルくらいの位置にぶどうの房が並んでいました。この時期の実はまだ青梅のように固くて粒も青く、試しに味見をさせてもらったところ、ぶどうというよりプラムやイタドリ(虎杖)のような酸味が強くて青臭さのある、とても美味しいとは言えない味でした。

完全に熟すのは9月上旬頃、それまで太陽の光をしっかり浴びて美味しい果汁を作ってもらうため、1つの小枝に3房以上なっていたら、房の茎を根本からハサミで切り落としていきます。そうすることで残った房に養分が集中し、濃くて甘いぶどうに育っていきます。

…と言うだけなら簡単に聞こえますが、実際には1つの茎から2房のぶどうがなっていたり、10〜20粒程の小ぶりな房がいくつもなっていたりと、1本の樹からでも個性豊かな形の房が沢山あり、慣れないうちは戸惑ってはオーナーご夫妻に尋ね、また戸惑っては尋ねを繰り返していました。2つとして同じ房はなく、見ているだけでも面白いなと思いました。

ひとしきり頭を悩ませた作業の結果、1本の樹から摘房されたぶどうは10リットルのビニール袋がいっぱいになる程の量になりました。この実は残念ながら、あらゆる工夫をこらして加工しても美味しいものはできず、仕方なく廃棄をしているそうです。何かに役立てられないか、と考えているもののこちらも頭を悩ませておられる様子でした。

農業体験4:ぶどうを守る袋かけ体験

摘房が終わると、残った房を鳥などの害虫や病気から守る為、しっかりと紙袋で覆う作業を行います。ハウス栽培や農薬を使用した場合、この作業を行わないケースもあるそうですが、ここではベリーアリカントAは屋外で無農薬栽培をしている為、この袋かけ作業を引き続き体験させていただくことができました。

まずはオーナーが袋の掛け方を丁寧に教えて下さいました。

使用する袋は、横長の紙袋の左上の部分に細い金具が取り付けられているのが特徴で、これをぶどうの茎に巻きつけることで雨風でずれ落ちたり飛ばされることなく収穫時期までぶどうを守ってくれるそうです。説明とあわせて丁寧に手本を見せて下さいました。紙袋は房がすっぽりと収まるように下から包み込み、最後に茎の部分で封をした上で、しっかりと金具で巻きつけるのがポイントです。

手本を見る限りではとても簡単そうに感じられましたが、実際にやってみると、これが非常に難しい!

小枝から伸びる房の茎がとても短く、どこに金具を巻きつけて良いのか…と、ぶどうと格闘することもしばしば。2つとして同じ房はないので、個性にあわせて巻き方を変えてみるなど工夫をこらしながら袋をかける工程は、対人関係とも似ているなと思いました。植物も生きているから個体差があり、それが本来の自然な姿ーーーそう考えると、どんな形のぶどうも大切に育てているオーナーの気持ちが少し理解できたような気がしました。

慣れないながらも30分ほど頑張った結果、ベリーアリカントA樹は白い花が咲いたような可愛らしい姿に変身しました。袋掛けされたぶどうとは9月上旬、実が熟すのを待って収穫時に再会することになります。

果たして、苦労して留めた金具は無事に9月まで持ちこたえてくれるか…病気にかからないか…鳥に見つからないか…そんな心配もありますが、収穫までのおよそ2ヶ月間でどんなぶどうに育つのか、楽しみが1つ増えた気分です。

農業体験5:無農薬ぶどうジュースで乾いた喉を潤す

農園見学、摘房、袋掛けと作業に夢中になっている間に気づけば2時間ちょっとが経過していました。日頃、デスクワーク中心で運動不足の私には、ちょうど小休憩取りたいなぁと思うくらいの頃合いでした。農業体験の最後には、農園で採れたぶどうを使ったぶどうスカッシュをいただきました。

農薬を一切使用していない為、ぶどうの皮ごとジュースに加工できるようです。皮のシャリっとした新食感も楽しめ、甘みと酸味のバランスも絶妙な他では味わえないとても格別なジュースでした。

ぶどうのお世話で乾いた喉を、ぶどうに潤してもらい、農業体験は終了となりました。

日常生活では味わえない農業体験をお楽しみください

農業体験には、「楽しみ」「達成感」「リラックス」「リフレッシュ」「発見」「ワクワク」「美味しい」という魅力があります。フルーツ王国おかやまでの農業体験は、ここでしか味わえない、「特別な美味しい」というご褒美もついてきます。

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