吉備の国岡山を代表する由緒ある神社

吉備津神社には、大吉備津彦命(おおきびつひこのみこと)が祀られていて、吉備の国岡山を代表する由緒ある神社です。

鳴釜神事(なるかましんじ)と温羅伝説で有名

吉備津神社には、「鳴釜(なるかま)神事」という神事があります。
祈願したことが叶うかどうかを釜の鳴る音で占う神事です。

岡山には、桃太郎伝説の起源と言われている「温羅(うら)伝説」があります。
「鬼」とされる温羅を、「桃太郎」とされる大吉備津彦命が討伐したという伝説です。

ですが、鳴釜神事の釜の音は、温羅のお告げとされています。
つまり、昔は敵対関係でしたが、今では、温羅、大吉備津彦命ともに吉備津神社に祭られているというわけです。

「平和の象徴」のように感じる神社です。

吉備津神社はあじさい園も有名です

梅雨の時期は、吉備津神社のもあじさい園が見頃になります。

6月下旬があじさいの咲くピークのようで、とてもきれいなあじさいに出会えました。
やはり自然に触れると心が安らぎます。

矢置岩

県指定の郷土記念物となった吉備津の松並木を進むと、早速、登場人物たちの活躍が飛び込んできます。

境内入口には「矢置岩(やおきいわ)」が鎮座しています。吉備津彦命がこの岩に矢を置き、温羅と戦った場所とされています。毎年正月の3日にはここで実際に矢を射り、災いを祓う神事が行われているとのこと。

ご社殿

こちらでは再建600年を迎える国宝の本殿や拝殿を見ることが出来ます。神社の背後には吉備の中山と呼ばれる御神体があり、これが備前国と備中国の境目とされています。

時は室町時代、金閣を建てたことでも知られる将軍・足利義満によって造られたとされる本殿。全国でもここだけの様式であることから、「吉備津造り」と呼ばれています。東アジアの伝統的な屋根である入母屋造を、贅沢に2つ並べてひとつの大きな屋根にしている格式高い建築方法だからです。

過去に2度も火事に遭ったこともあり、現在は火災から守るため、最新の防災設備を導入しているそうです。灼熱の夏は毎日15:55からの5分間、大胆な放水を行って観光客に納涼を届けるイベントも実施しています。(取材当時)

回廊

ご社殿の直ぐ右側へ進むと、重厚な佇まいの北随神門があります。その先には約400mの廻廊が続きます。山の地形に合わせて建てられており、上から覗く景色は見事としか言いようがありません。春には梅や牡丹、椿も咲くことで景観も一変します。

近年ではNHKドラマ『犬神家の一族』などドラマやアニメ、映画にもロケ地としても登場しました。

鳴釜神事

「温羅伝説」の中で最も印象的な伝承のひとつに、「鳴釜神事(なるかましんじ)」があります。

温羅伝説では、吉備津彦命は温羅を捕らえ、その首を吉備津神社の「御竈殿」の下に埋めました。しかし埋められてから13年もの間、地中深くから温羅の唸り声はやまなかったといいます。ある夜、吉備津彦命は夢の中で温羅をみました。温羅は、自分の妻に釜の火を炊かせば、今後の吉凶を釜の音で占うと言います。これが鳴釜神事のあらすじです。

この物語の一説は、上田秋成の『雨月物語 吉備津の釜』(うげつものがたり、1768年)に登場します。

この神事は現代まで続いており、釜のなる音で参拝者の祈願を行っています。大きな音が鳴れば吉、音が鳴らなかったり途切れたりしたら凶、といった具合です。

2018年に認定された日本遺産において、27の文化財の中にこの鳴釜神事も含まれているのです。写真撮影はできませんが、見学は15時まで可能でした(取材当時)。

温羅は吉備の人々に技術を伝え、吉備の女性を妻に迎え入れたなど、地域の人々から愛されていたことが感じ取れます。また、神事の執り行いは非常に荘厳で格式高く、温羅を丁重に扱う印象を受けました。凶運を恐れるのではなく、温羅を慕うための儀式なのかもしれません。

最後に

備前一宮駅にはレンタサイクルショップがあり、吉備津彦神社~吉備津神社などを自転車で回ることもできます。

季節によって変化する自然豊かな景色をサイクリングで楽しむのもおすすめです。また、神社近隣の茶房できびだんごや抹茶を味わうことができます。歴史探訪の途中に、ほっと一息つくことも。

岡山にお越しの際は、温羅伝説を随所に感じてみてはいかがでしょうか?